2010年04月02日 20:04 発信地:ポルトープランス/ハイチ
全長140メートルのオラ・エスメラルダ号(1万1000トン)は元々、カジノに2つのバー、3つのレストランを備えたブラック・プリンス(Black Prince)号というクルーズ船だった。バーのうちひとつは現在も営業しており、震災後の街中から離れた安全な環境の中で職員たちにくつろげるひとときを提供している。
港にたたずむエスメラルダ号のかたわらには全長約50メートルの「シー・ボヤジャー(Sea Voyager)」号(1200トン)も停泊している。ある関係者によると、シー・ボヤジャー号は3か月間、エスメラルダ号は半年間の契約で、国連が現地職員のための宿舎として、リース契約を結んでいる。
震災後の危険な環境で任務を遂行している国連職員たちに、元クルーズ船を宿泊所として提供するとは妙案だという声もある。しかし今も現地では何万人もの被災住民が、腐敗臭のただよう避難民キャンプで日々ぎりぎりの生活を送っている。目前の問題に無頓着で、野放図に振る舞いがちな国連体質を象徴している、という糾弾の声もある。
例えばシー・ボヤジャー号では、エアコンの効いたスイートルーム数百人分が用意され、40ドルという職員割引で日々3食にありつける。毎夜船上でパーティーが行われているという噂にはコメントを控えながらも、ある職員は「ハイチに滞在するのにこれ以上のところはない」と言う。相場だったら150ドル(約1万4000円)相当のホテルに匹敵するという評価だ。
1月のハイチ大地震で国連は過去に例を見ないほど多くの職員を失いながらも、復興を軌道に乗せるために全力を投入してきた。しかしその努力を、この贅沢な宿舎がおびやかしかねない。
元々、国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)はハイチの都市貧民層から長年、懐疑的なまなざしで見られてきた。ほかに良い宿舎案がないのだとしても、クルーズ船の印象は最悪だ。
「国連職員の宿泊がクルーズ船っていうのは、彼らに対するハイチ人の見方と完ぺきに合致すると思います」とポルトープランスの代表的ホテル、ホテル・オロフソン(Hotel Oloffson)を所有するリチャード・モース(Richard Morse)さんは言う。「避難住民をクルーズ船に住まわせればいいと彼ら(国連)が考えれば、ハイチ住民のためにクルーズ船を借りるはずでしょう。わたしが誤解しているかもしれないけれど、彼らは高見の見物なんじゃないでしょうか」
国連人道問題調整部(UN OCHA)の幹部、サラ・マスクロフト(Sarah Muscroft)氏はクルーズ船の採用について、支援国から宿舎の安全性に関して強力な要請があるからだと説明する。「プレハブに住まわせるなら要員を派遣できないと言われるんです」
医療支援スタッフとしてシー・ボヤジャー号に滞在したメーガン・Bさんは「水上ホテル」に到着した2月16日、ブログにこう書いた。
「今夜は国連スタッフ15人が着いた。シャワーが浴びれて温水なだけで、みんな大喜び」。そして週末の日曜日には、「ほとんどのスタッフはバーにいた。毎日そうみたい。ハイチで1日中働いた後ならそれも無理ないと思う。ここの人たちはホントにパーティー好き」と記した。
現地でどう見られているかという問題の重みについては国連も承知していると、マスクロフト氏も言う。しかし「さまざまなことをこなす中で、それを最優先に考えるのは、現実的に難しい」と語った。(c)AFP/Andrew Gully
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